富嶽三十六景

富嶽三十六景は、江戸時代の天才版画家葛飾北斎の代表的作品である。大波の向こうに見える小さな富士、などの大胆な構図は彼ならではのものである。 富士山には月見草がよく似合うといったのは太宰治。彼は山梨県天下茶屋滞在中に、黄色い月見草越しの富士を見て書いた。ただし月見草は薄紫の花で、黄色いのは待宵草(まつよいぐさ)である。どちらも明治初めに入ってきた外来種で、よく混同される。 最近は東京からも富士山がよく見えるようになった。冬は空気が澄んでいるせいか、とくによく見える。羽田空港行きのモノレールから、意外と大きい富士山を発見して驚くことがある。飛行機上から雲の上に浮かぶ富士山もまた、独特のものだ。富士山は日本でもっとも高い山で、標高3776メートルある。飛行機は1万メートル前後の高さを飛ぶから、富士山をはるかな高さから見下ろすことになる。 日本人は富士山が好きだ。これまでわが国の画家にもっともよく描かれてきた山は、断然富士山だろう。地域の山を富士山に「見立てる」ことはかなり昔から行われてきたようだ。この地域富士は、一説には400近くあるという。 (2015.3.11)