6月はいっせいに
6月はいっせいに花開くという歌があった。たぶん、アメリカかヨーロッパの曲ではなかったか。半年雪に埋もれる北海道育ちにとっては、じつに実感がある。春の、心が浮き立つような気分は、雪国で暮らした人間にしかわからないかもしれない。長い冬を耐えていたものが一気に解放され、花も咲く準備をはじめる。
北海道出身の作家伊藤整の自伝的小説に「林檎園の6月」という詩が出てくる。
この花が散れば
それで夢のように過ごした6月は経ってゆき(中略)
ただ狂ほしく私をめぐって
緑へ緑へと季節が深まるばかり
小樽市郊外の塩谷村から小樽高等商業に通う伊藤は、通学列車で高商先輩の小林多喜二と会ったりする。
鹿児島の荒田神社の近くにブーゲンビリアの大木があった。ブラジル原産のこの木は、霜さえなければ日本の冬にも耐えるようだ。和名はイカダカズラ(筏葛)という。
(2019.7.7)